NEOぱんぷきん 2017年9月号 好きです「遠州」!

更新日:2018.9.1

「文化花開く、品格・魅力ある日本と地域を創ろう」

平成30721日、「地域の芸術文化を考えるシンポジウム&佐藤典子先生の江口隆哉賞受賞と文部科学大臣賞受賞を祝う会」が開かれました。シンポジウムでは、現代舞踊家の佐藤典子先生のほか、川勝平太静岡県知事、宮城聡静岡県舞台芸術センター総監督、磐田商工会議所の高木昭三会頭によるパネルディスカッションが行われました。今回のパネルディスカッションからは、多くの「気づき」をいただきました。

まず、佐藤典子先生が現代舞踊の世界に入ったのは「世の中が軍国教育から戦後民主主義教育へと目まぐるしく変わっても、現代舞踊を追求し、凛として変わらずに生き抜いた石井小波先生の生き様に感銘を受けたから」とのことでした。どんな変化があっても、どのような分野や内容であっても、一貫性を持つこと、ブレない生き様こそ品格があること、それは時として人に感動と勇気を与えるということだと思います。また、ポーランドでは、国を失った歴史があるため、民族の音楽・舞踊・文化を大切にする国民性があり、そのような国民的な「土壌」の中から天才・ショパンが生まれたとのお話がありました。ゆえに、「きわめて高度な文化の存在=頂点が高いこと」と「多くの国民が文化に親しんでいる=裾野が広いこと」は車の両輪であり、すそ野が広くなければ山も高くならないように、多くの国民が文化に親しんでこそ、高い芸術文化も生まれうるというお話もありました。まさに、日本においても、それぞれの地域で、地域の文化を高めるために、できることがあるのではないか、今すぐに効果が現れなくても、20年くらいかけて文化を高めていくことは必ずしも無理なことではないと思います。文化が高まれば、それが魅力となり、魅力に人は惹きつけられる、まさに「地域おこし」や「観光」の原点でもあるように思います。佐藤典子先生が、東京や大阪、名古屋などを活動拠点とするのではなく、磐田を活動拠点としたことについては「故郷の磐田の文化、地域の文化こそ高めていきたい」とのことでした。文化・芸術のすそ野を広げたいという佐藤先生の思いや磐田に対する強い郷土愛を感じました。

「文化」の定義について、「文化とは腹の足しにならぬもの、されど、人間が人間らしく生きていくために必要欠くべからざるもの」と言った磐田の元市長さんがいらっしゃったそうです。言い得て妙だと思います。かつて、松下幸之助は「戦後は物質的には豊かになったが、精神的な豊かさには程遠い」と言いました。精神的な豊かさというと、道徳やモラルのことを主に考えてしまいがちですが、精神的な豊かさの中には文化度の高さも含まれるように思います。パネルディスカッションで宮城聡SPAC総監督は「芸術には勝ち負けがない。芸術は、競争や勝ち負けだけではない生き方や価値があること、人間らしく生きることを気づかせてくれる」とのお話もありました。むき出しの弱肉強食の競争原理がまかり通り、そのひずみに対して声を上げることの無力感すら覆いつつある時代だからこそ、また一方で、物質的に繁栄して余裕がある時代だからこそ、競争を全て否定するわけではありませんが、一方で、「人間らしく生きていく」ためにも、文化花開き、品格ある、魅力ある日本や地域を創っていくことは、時代の要請に合う姿勢ではないかと感じます。

小山展弘

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