報徳 11月号「報徳と協同組合、労働者協同組合の法制化への動き」

更新日:2019.11.22

2012年は国連が定めた「世界協同組合年」であったが、日本国際協同組合年実行委員会が作成したパンフレットには、日本の協同組合が報徳社を含む江戸末期の農村協同組織にルーツがあると明記している。戦前の産業組合法はドイツのライファイゼン組合を参考にしているが、報徳社の精神が日本の協同組合のバックボーンとなっており、それが戦後の農協にも受け継がれ、現在に至っている。協同組合金融では、貯金は備荒貯金と言われ、預金金利を目的とするのではなく、危機に備えるために貯めること自体を目的とする。融資は相互金融と言われ、資金を必要とする人に資金を提供すること自体が目的であり、必要なコストとしての金利をお願いするものの、利益をあげるために金利を僅かでも稼ぐのではないという矜持を持っている。市場環境の中で必ずしもこれらの矜持は目立つものではなくなってきているが、それが失われたわけではない。「甘えを許してはいけない、しかし痛みを共有する姿勢を持て」「お客様とともに成長するという姿勢を忘れるな」とは、私が、農協系統の農林中央金庫(大正12年設立、旧称;産業組合中央金庫)に入庫し、融資担当に配属された際に上司からご指導いただいた言葉である。中桐万里子さんにこのことをお話した際に「まさに報徳の姿勢ですよ。今でも協同組合の中に報徳の姿勢が息づいているのですね」と仰っていただいたが、現在も奉職中の皆様には、ぜひ、この報徳に源流を持つ日本の協同組合の精神や姿勢を、これからも貫いていただきたい。

ところで、現在、「労働者協同組合法」の法制化が議員立法で実現されようとしている。労働者協同組合とは、働く者、市民が出資して、共益権を行使して事業運営に参加して、協同して働く協同組合を想定している。総会議決権は、株式会社と異なり、出資口数は関係なく一人一票である。人に雇われるのを待つのではなく、自分たちで事業を興し、社会的なニーズを満たす仕事を非営利でしていこうという組織だ。企業が事業を行うには儲からない、行政が行うことも困難だが、必要とされている社会的ニーズを満たすために労働者協同組合の活躍が期待されている。中山間地域などの過疎地域での社会保障、森林整備事業、農業生産、障害者雇用や引きこもり者の社会復帰などに既に実績がある。この労働者協同組合は2015年の総会を小田原で開催した。小田原の地を選んだのは、報徳を学びつつ、協同組合の原点を大事にした活動を行っていこうとする意図からだった。労働者協同組合は海外で法制化がずっと先行しているが、報徳思想をバックボーンとしつつ、社会的ニーズが満たされ、大きく活躍されることを願っている。

小山展弘

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